小冊子『継ぐこと 暮らすこと』ができました

2026年10月21日

小冊子『継ぐこと 暮らすこと』ができました


器を直す仕事や日々の暮らしの中で考えてきたことを、小冊子『継ぐこと 暮らすこと』にまとめました。

きっかけは昨年、これからの自分の人生や、山鳥の仕事をどう続けていきたいかと考えたことでした。

どのようなことができれば、自分なりに満足できるのか。

考えているうちに、日々当たり前にしている修繕の、その下地にある考え方を文章に残せないかと思うようになりました。

壊れたものを丁寧に直し、また使えるようにする。そのために器を眺め、手で触れ、どのような姿に戻そうかと考えます。

作業の中ではその都度判断していることも、いざ言葉にしようとすると、普段の暮らしや、ものとの付き合い方にまで話が広がっていきました。

考えをまとめようと、以前書いていたメモを掘り起こしました。同じ頃のブログにも、預かった器を前に迷ったことや、作業の中で気づいたことを残しています。そうした日々の記録が、今回の冊子の下敷きになっています。

2014年のブログには、古い碗や猪口を修理したときのことを書いていました。器の縁に段差が出ないよう何度も指でなぞり、口をつけたときに違和感がないよう、表面を整える作業を繰り返していました。

仕上げについては、2016年の記事に「基本漆仕上げでお返ししていますが、加飾の必要があれば銀や金の蒔きを施しています」とあります。民藝の窯元で作られた器には、漆仕上げの素朴さがよく似合うと感じていました。一方で、金銀を蒔くときには、繊細にしたり、ふくらみを持たせたりと、器に合わせた仕上がりを求めて試行錯誤しています。漆のままで仕上げるか、金や銀を蒔くか。その判断も、まずは器を直して使い続けることから始まっています。

2018年の年頭には、「今後の使用にしっかり耐えることと直し跡の心地良さ」を、普段使いの器を直すときに気を付けていることとして挙げていました。古いものを手掛けるときには、そのもろさの中にある美しさをどう受け止めればよいのか分からず、不安を抱えながら作業を進めたことも書いています。

読み返すと、当時から同じようなことで迷っていたのだと思います。

丁寧に手をかけたつもりでも、仕上がってみると直しが強すぎたり、丈夫さと見た目の釣り合いに迷ったり。冊子では、そうした迷いを過去の器の話として書いています。全体を見渡して判断することは、以前より答えを出しやすくなりました。それでも、それに甘んじず、まだ学んでいるところです。材料や工程は少しずつ変わりましたが、器をよく見て、使われる様子を想像しながら手を動かすことは、当時から続いています。

また、直すことと並行して、暮らしの中で何を選び、使っていくかということも考えてきました。

以前『民藝』で取り上げていただいたのも、そのような話でした。今回の冊子ではあえて詳しく触れていませんが、使いたいものを選び、手入れをしたり、壊れれば直したりしながら付き合っていくことは、私の中ではつながっています。

『継ぐこと 暮らすこと』には、仕事で預かった器のことも、自分の暮らしで使っているもののことも綴りました。直そうとして迷ったことや、直したあとに気づいたこと。手順の説明だけでは伝えきれない、そうした経験を文章にしています。

手元に届いた冊子を読み返すと、もう少し書きたかったところや、言葉を尽くせたのではと思うところも出てきます。それでも、長く考えてきたことが一冊になり、まずはうれしく思っています。

以前のブログはこちら


小冊子『継ぐこと 暮らすこと』は、教室でのお渡しと郵送で販売しています。

A5判・44ページ/1,500円(税込・送料別)

内容や郵送のお申し込みについては、お知らせ・ご案内をご覧ください。

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