2025年1月 それぞれの教室にて

2025年01月28日

新年を迎え、それぞれの教室に新たな気持ちで臨みました。普段ならあっという間に過ぎる1ヶ月ですが、年末年始の忙しさもあり、今回はいつもより随分長く感じられたように思います。年始のご挨拶を交わした後は早速作業に取り掛かり、皆さんそれぞれが集中して作業を進められていました。この季節は漆の硬化速度がいつもより遅くなるため、ひと月経っても特に室のような環境が整っていない生活環境では、漆がまだしっかり乾いていない場合があります。そのため、作業の一番最初に乾燥の状態を確認するようにしています。



1月6日マダレーナカフェ教室

どういうわけか、マダレーナさんへ伺う日はグズついた天候になることが多く、この日も程なく雨模様となりました。漆の作業には湿度が有難いのですが…。

この日は午前中にビギナークラス全5回の最終回を行い、蒔きの工程を進めました。真鍮(金色)と錫(銀色)の仕上げを選び、それぞれ蒔き終えると、「おお〜!」という感嘆の声が上がり、地道な作業が一気に報われる瞬間となりました。手がいっぱいで写真を撮れなかったのが残念ですが、皆さんがアドバンスクラスを継続されるとのことですので、次回は必ず記録に残したいと思います。

午後はアドバンスクラス全6回の最終回でした。仕上げまで進んだうつわや、新たに継ぎ始めた作品など、それぞれのペースで作業を進めていただきました。質問は要所要所でいただく程度で、大まかな流れはしっかり習得されているようです。また、次回も継続される方がいらっしゃるとのことで、引き続きサポートできることがとても嬉しいです。

なお、ビギナークラスの新規募集については、詳細が分かり次第ご案内いたします。ご質問やお問い合わせがございましたら、どうぞお気軽にお声掛けくださいませ。


1月9日ソノモノ教室

第1週が三が日と重なり、翌週からの開催となりました。

ソノモノさんのお店周辺には美味しい飲食店が多く、駅から徒歩1分ほどの立地ですが、毎回ついきょろきょろしながら到着してしまいます。

こちらでも午前と午後の2クラスを実施しました。午前中は、もう2年ほど継続して通ってくださっている皆さんのクラスです。道具も使いやすいようにカスタマイズされており、集中して作業に取り組む様子はまるで工房のような雰囲気です。

うつわ修繕と並行して拭き漆の作業を進めている方は、wasaraの紙コップに下地の錆漆を塗っていらっしゃいました。wasaraは蝋引きされていないため漆がよく染み込み、繰り返し作業を重ねることで漆製品に変わります。

漆は用途がとても広く、さまざまな可能性を秘めています。これからも漆本来の楽しさを皆さんと一緒に続けていければと思います。

午後のクラスでは、お一人が大破損の修繕に挑戦!どのパーツがどこと接するのか、事前の準備が肝心です。特に小さなピースは実は厄介な存在。この後の格闘は、経験者にしか分からない苦労があります。


1月12日インヤンレスト教室

こちらではコース別ではなく、ご自身のペースで仕上げの完成度を決めながら作業を進めていただきます。

ほぼ全員がビギナーとして参加され、回数を重ねるうちに、自分で作業の段取りを組みながら進められるようになっています。

また、こちらでは作業中のうつわを保管する場所がありますので、複数の修繕を並行して進めやすい環境です。漆の硬化の都合上、数個を同時に進める方が効率的です。例えば、錆漆を作ったら3~4つに埋めてみたり、研ぎの際も耐水ペーパーの番手が同じものを複数同時に進めたりするのがおすすめです。ただし、あまり多くのうつわを同時に進めると進捗状況が分かりにくくなってしまいますので、初心者の方は3~4個ずつ取り組むと良いでしょう。

午後はお一人の方が漆器の修理に取り組まれました。最近のもので、収納の際に引っ掛けてしまい、横に長い傷を作ってしまったとのことでした。修繕方法についてご相談いただいたところ、ちょうど金箔の微塵が手元にあったため、溝に生漆を塗り込んで拭き取った後、箔を刷り込んで仕立て直しました。蓋に若松の平蒔絵が施されていたので、仕上がりの雰囲気も良く、修繕後の姿に合っていたと思います。

半ば諦めておられたそうですが、「相談して良かった」と喜んでいただき、こちらもホッとしました。漆器は、漆器らしさを生かした修繕が似合うものだと改めて感じました。


1月22日アトリエニノン教室

アトリエニノンさんの教室も、各回ごとに開催されています。今回は第4週が月末ではなかったため、少し分かりにくかったかもしれません。

仕上げに差し掛かったうつわもいくつかあり、真鍮粉を蒔いていただきました。本来、金継ぎは「金」を蒔くものですが、金の価格が10年前の5倍にもなってしまい、あっという間に手の届きにくい素材となりました。それでも、漆で丁寧に下地を整えておけば、金色の強い光も経年で落ち着き、品の良い仕上がりになります。

画像のように、粉を蒔く方法には筆を使う方法と真綿を使う方法があります。筆はしっかり粉を含むため、楽に作業が進められますが、塗り面に触れてしまうとせっかくの塗りが掠れてしまうため、慎重さが求められます。一方、真綿は元々消粉を蒔く際に使われるものを応用した方法です。軽いので蒔いた後に軽く抑える必要がありますが、筆よりも繊細に粉を定着させることができます。

どちらの方法にも長所と短所がありますが、回数を重ねるうちに、それぞれの特性に慣れていくことで、よりスムーズに作業が進められるようになりますよ。


自宅教室

blogではあまり詳しくご紹介していませんが、定期的にお越しくださる方も多く、教室時間は3時間と長めのため、じっくりと作業に取り組んでいただけます。また、外の教室では時間や荷物の都合で難しい本金の蒔きや、小さな螺鈿作業なども行っています。

こちらは、Mさんが鎌倉彫り会館で入手された木地に拭き漆を施し、螺鈿で加飾された箸置きとお箸です。また、うつわに関してはご友人から預かって修繕を進められる方も増え、それぞれのペースで作業の幅が広がっています。

さらに、教室時間内であれば、ご希望に応じて普段の作業スペースをご見学いただくことも可能です。また、今後は修繕した作品の展示も予定していますので、自宅教室ならではの雰囲気や活動を楽しんでいただければと思います。

自宅教室ではお心のこもった差し入れをいただき、他の皆さんと分けたり、家族でおいしくしただきました。

また各教室では、店主の皆さまが会場を整えてくださり、さらに教室後には丁寧にお茶の準備までしていただくなど、大変お世話になっております。改めて心よりお礼申し上げます。

今年も、皆さまとともに楽しく充実した教室にしてまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。