蒔き仕上げに使う粉(ふん)
2023年02月12日
金継ぎに使われる金紛は消粉とよばれる箔を細かく砕いたものと、丸粉と言ってほぼ球体に近いものがあります。消粉は研ぎをせずに蒔き放ちという仕上げをするので控えめな艶になりますが、丸粉は固めたのち研ぎをして断面を最大限に出すので金属の光沢が強くでます。
先日、依頼品に「平目金(ひらめきん)」を使って蒔きをしました。 平目金は丸粉を潰して楕円にしたもので、 同じ号数でも面が大きくなることでより光が強く存在感があります。あまり金継ぎでは出番がないのですが、修理を施した水晶チャームの接合部分が研ぎができる下地ではなかったため、磨かなくても役目を果たして粒が光り、きわめて小さな範囲でしたが金らしい華やかさが出ました。
金継ぎの加飾は金銀にこだわらなくても真鍮や錫などの代用紛や、丁寧な漆塗りで十分役目を果たすのですが、今回のご依頼のように小さい範囲の傷を魅力的にするときに金や銀の輝きは代えがたいものだと感じました。金(だけでなく銀やプラチナ、和光銀など)の高騰で広範囲に蒔くと修理の範疇を超えてしまい、あまり進んで提案ができなかったのですが、ほんの少し使うのであればそれほど高くならず、選択の一つに加えてみようと思います。