横浜芝山漆器作品展

2023年09月22日

令和5年横浜芝山漆器展が9月12日から18日まで開催され、多くの方のお越しいただきました。初日は関係者のみならず、毎回作品を楽しみにしてくださる方で大変混雑しましたが、2日目以降は比較的ゆっくりと先生の作品を見ていただけました。会場の岩崎博物館は風光明媚な横浜山手地区にあり、建物は近年の建築とはいえ雰囲気があるので、観光中の暑さ凌ぎでふらりと立ち寄られる方にも横浜芝山細工のことを知っていただくよい機会となっているようです。


芝山師である宮﨑輝生先生の額縁作品の出品は5点、特に双鶏図と梅の古木に降り立つ鷲の図は、先生が手元に残しておられていた少し前の作品です。どちらも横浜芝山漆器として多く作られた構図で、もともと分業制だった時代に効率よく組み立てられるよう、各パーツの大きさやデザインが決められていて作家作品のように特徴あるものではないと先生自ら解説してくださったのですが、適材適所を考えて材料の選別から始まる気の遠くなるような作業時間、緻密の極みともいえる、今では宮﨑先生お一人しか保有していない高度な技術の集結です。搬入時は会員で入れ代わり立ち代わり額を眺め、また来場されたどの方も作品の前に長く立ち止まり、 息を吞むほど驚かれたり、深く感動されていたのが印象的でした。


私が会で作成していた芝山作品は1年ほどかけて白蝶貝の掘りや塗り板の準備していたのですが、途中で土台の錆付けのやり直しや塗りの不手際など何度も行きつ戻りつしてしまい、作品展に間に合わせることができませんでした。こちらは次の機会までに間に合うように進めていきます。


時々お声掛けいただく拭き漆のバングルはなんとか数個出品することができたのですが、金属粉の高騰で丸金を使った新しい作品はほどんど作れなかったので、過去の蒔絵皿を出品しました。銀を使った作品は露玉という銀の粒をはめ込むことで立体的になり、前回とは違った表情が生まれたのでこれはこれで良しということになりました。

(こちらは初日に、来てくださった方のところへ)

(インド更紗模様の小皿もすべて旅立ち、ありがたかったです)


宮子先生の教室で作り始めた螺鈿の箸置きは、前回の作品展にまにあわず今回漸く出せたのですが、縁があって気に入ってくださった方のところへお嫁入りです。貝の切り落とし部分を使っているので、漆が多く乗っている部分がところどころ黒色めいているのですが、それが自然な表情に見えるのがよいと思っていたので、同じように感じていただけてとてもうれしいです。更には収めた桐箱に箱書きまで依頼してくださり、感覚的に「水面」と名前を付けて送り出しました。

作品制作は技量向上の道の長さに腰が引けてしまうのですが、好きだと思うものをお渡しする機会がとてもよい刺激になり、次の発表の機会に向かって決意を新たに取り組みます。


今年は会場の都合により例年より短い期間だったにもかかわず、来訪者数はほとんど変わらないとのことでしたので、ずっと興味を持ってくださる方が多数おられることが窺い知れました。

講師を務めておられる赤堀先生、宮﨑先生のご尽力もあり、芝山漆器展はこれまで約40年以上と大変長く続いていますが、閉会時に赤堀先生が、市のさまざまな業務見直しが関係して、次回も同じような形式で開催できるか確定ではないと少し低いトーンでお話されていたので密かに気を揉んでいます。できるだけ良い方向に着地してほしいと思います。 


最後に、お越しくださった皆様、関心を寄せてくださった方々にこの場をお借りしてお礼申し上げます。まことにありがとうございました。