接着だけ

2021年03月08日


金継ぎを始めたきっかけは自宅で使っているうつわを修理するためで、いまだにやっしまうこと多々。先日も数年使っているドリッパーの袴部分を折ってしまいました。 折れたままで使えなくもないのですがそのままではやはり痛々しく、麦漆で接着しました。錆漆でのほつれ埋めも蒔きもしません。

愛着あるとはいえ買い換えできるものを仕事と同じようするのはまたすこし異なることで、最小限の直しで、外れたとしてもまた自分で手をかければよく、簡易直しというのはこのような手順ではと考えています。
小さな欠けなども使用に差し障りがなければ角を研いで指の辺りを軽くすればよい場合もあります。
かぶれのマイナス面があるのでどなたにもと勧められないのですが、漆で接合するだけの選択があると幅が広がるように思います。

ただし割れたときに一度化学接着剤を使ってしまうと、剥離させても表面が荒れてしまうのか強度が上がらず、錆漆をギブスのように覆って重ねます。
また釉薬との相性や耐熱用などまれに接着が強くならない場合もあり、こちらも接合のち錆漆を埋めています。反対に土地で採れた土を多く使っている焼物は強く接着しますし、古くからの手法で作られた物や古物なども同様です。
土鍋など水気にさらすことが多くても錆漆で接着して再び火に掛けられるようになるものもあります。

目一杯手法を詰め込んで直すもの、少し手前で手を止めておくもの、機能の補完だけするもの、依頼するのか自分である程度手掛けるのかと色々な考え方があるので、愛着のあるこれまで生活を共にしてきたものをどのように活かすのかという面から考えるのも楽しいことだなと思います。

金継ぎの講座では直し方をお伝えすることに加えて、道具の手入れなど何かヒントやインスピレーションを得る場であればよいなと思っています。